【 OSAMU GOODS TRIBUTE 】でのトークセッション。展示中の9月13日に、オサムグッズ生みの親・石井志津男さん(写真右)、 Groovisions の伊藤弘(左)さん、と ぼく(中央)の三人での四方山話でした。
はじめはアナログ時代(ぼく)とデジタル時代(伊藤さん)のキャラクター談義を計画していたのですが...。フタをあけてみたらお客さまがオールド・オサムグッズ・ファンの女性のかたばかりだったので、専門的なデザイン論にはあまり言及せずに終始してしまいました。せっかくぼくの大好きなデザイナーの伊藤さんをお招きしていたので、セッション終了後のピザ屋さんでの語りたりなかった内容をここに追記します。
ぼくがオサムグッズをデザインしていた'80年代。まだコンピューターは普及してないから、何でも手づくりのアナログの時代。手描きであることは個性的な表現につながっていました。「キャラクター」とは「性格」のことですから、他との識別可能な、際だった特長が必要とされます。ひと目で何かが分かること。また景気が上向きの'80年代は、キャラクターに前向きで明るい個性が望まれた時代でもありました。
'90年代に入った直後、それまで右肩上がりだった経済は突然バブル崩壊。やがて閉塞感で人心も冷えこんでしまい、ローカルで、どことなく投げやりな「ゆるキャラ」が表舞台にあがりました。絵の個性うんぬんよりも、奇妙な風体そのものが好まれたようです。ちょんまげを結った猫のような着グルミ人間とかね。バカだなと笑えちゃうキャラクター。または逆に不穏な三白眼の危ない少女といった「ブキミかわいい」キャラクターも、あの頃の時代を反映するものでした。
一方で、グラフィックデザインの世界はすべてがデジタル化され、グルーヴィジョンズの「チャッピー」を嚆矢とする、いわば無個性のキャラクターも出現しました。デジタル的に記号化され増殖してゆく超クールなキャラクター。伊藤さんは、着せ替え人形という発想で「チャッピー」をつくられたそうです。キャラクターは分解されて、モジュール化される。デジタル画面上では、自由にそのモジュールを組み換えて、好き勝手にマイ・チャッピーをつくることができちゃう。まさに電子着せ替え人形という感じですね。チャッピーの発想は、その後のイラストレーター、とくにパソコンで絵を描く若い人たちにも多大の影響を与えたと思います。
キャラクターは時代を映す鏡でもあるでしょう。今年は思いがけず、デジタルならではの パクリコピペ・デザインという不名誉なものまで発覚しましたが、一体いまはどんな時代なんだろうね。それも強引に白紙撤回されたあとでは、次にどんなデザインやらキャラクターが登場してくるのか(またはしないか)、いずれにしても激変するこの時代においては(他人事のようだけど)今後が面白いです。
【10月3日 追記】このトークセッションは、オサムグッズの公式ホームページにて連載スタート。→http://www.osamugoods.com/news/index.html