新茶とフロランタン

osamuharada2016-06-16

今年も飽かず、また新茶を喫しています。四月、南の屋久島産から始まって九州、四国、山陰地方と北上してきました。それも製造法にこだわりがある茶園のものをアレコレ飲み比べるのが楽しみなのです。
茶葉もその年々の気候によって、微妙に変化しています。その年の新茶に合わせて、茶請けの甘い物もいろいろ変えてみます。この季節のレパートリーの中では、新橋小川軒「フロランタン」が気に入っています。アーモンドにクルミ、ピスタチオをキャラメルでかためたお菓子で、日本なら「おこし」ですね。梅雨どきの、ちょっと肌寒い朝などによく合います。
この写真、フロランタンをのせてみた小皿はフランス製で、クリニャンクールで買った安物ですが、英国の清涼飲料水会社 Schweppes の宣伝用の景品皿なのでした。皿のデザインは19世紀に流行った通称 WILLOW 柄。むかしぼくの仕事場のホームバーで、この皿をパイプの灰皿代わりに使っていたら、安西水丸先輩がすっかり惚れ込んでしまったので、別に持っていたオリーブグリーンの同じ皿をあげちゃいました。その後、水丸さんは皿に描かれたウィロー柄の物語のほうにもハマってしまい、本格的に「ブルー・ウィロー」をコレクションし始めたのでした。
ウィロー柄とは、柳に中国風の桜蘭と橋、男女の純愛物語が描かれています。二人は駆け落ちしてオレンジの島で暮らすようになる。やがて男は有名な作家になるが殺され、後を追って女も死に二人は鳩になって昇天。というロマンチックな物語が秘められている(らしい)のです。そこが水丸さん好みだったのでしょうね。小皿の写真→http://osamuharada.tumblr.com/
このコップ型茶碗のほうは、舩木伸児さんの作。イッチンのペイズリー風の柄。こちらは煎茶専用で使い込むほどに味わいが出てきました。むかしぼくの持っている舩木さん作の八角皿を見て、これまた水丸さんが気に入ってしまい、何かの取材旅行だったか、舩木さんのいる島根県布志窯を訪ねてみたよ、と嬉しそうに報告してくれたこともありました。ただ同じ皿は手に入らなかったよし。あんなこともこんなこともあったな、とトシふるごとに思い出も積み重なってゆくものですね。煎茶を喫する時間が長くなってきたのもそのせいかな。
舩木さんのスリップウェア→[id:osamuharada:20090317] (写真右上の八角皿:水丸さんが見そめたもの)